つくばの研究所一般公開レポート
~殺処分されるふれあい動物 ~
茨城県のつくば学園都市には、さまざまな分野の研究所が集中しています。今年は4月2
0 ~ 2 1日の2日間、それらの研究所で一般公開が行われました。中でも畜産草地研究所では、ハムスターのプレゼントを行うとのこと。二人で3カ所の研究所を回りました。
会誌『ALIVE』103号より
ALIVE調査員 東記
【畜産草地研究所】
実験用ハムスターのプレゼント企画 !?
この日、朝の開始時間前には既に人が並んでおり、開場するとすぐ、ハムスターのプレゼントコーナーは親子連れでごったがえしました。
この企画に対しては、直前に抗議して阻止することも考えましたが、既にその時点でプレゼント用のハムスターが生まれているのは明らかで、企画中止で殺処
分か実験利用となるより、当日行ってもらうほうがよいだろうという判断をしました。しかし、ハムスターの持ち帰り用にティッシュの箱を持ってきた子なども
いて、やはりハムスターの行く末を思うと、阻止しなかったことは、後悔もしています。
また、こんな企画、余ったらどうするんだ?とも思っていましたが、とんでもありません。ハムスターは大人気でした。プレゼントは1日10匹ずつとのこと
で、この日も10匹が「配布」されました。二人で行ったので、一人1匹ずつで2匹はもらえましたが、特に連絡先なども聞かれません。選抜などもなく、早い
者勝ちに近い状態でした。飼い方の紙を1枚もらっただけです。ハムスターは12週齢のオスで、確かに人の手には慣らしてありました。
観察用ハムスターは殺処分
その横には、子どもにハムスターを触らせる「ふれあい」コーナーもあり、何と、終了したら殺処分とのこと。それならばということで、こちらももらってきました。
しかし、触らせずに観察だけさせていた一腹のハムスターは、まだ幼く、咬むかもしれないという理由で、もらうことはかなわず、殺処分です。研究所から出し
ていい数が決まっているとも言っていました。ならば倫理委員会で決まったのかと聞いても、はっきりとしたことはわからず、今年初めてやった企画だというこ
とだけがわかりました。
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ふれいというより、いじるだけ?
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「観察しよう!」だけで殺処分
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ふれあいのために生まれ、死ぬヒヨコ
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ヒヨコに群がる子どもたち
会場にはこのトレーが2つ
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同じフロアには、ヒヨコのふれあいコーナーもあり、子どもがたくさんいました。やはり子どものことなの
で、ヒヨコの扱いは非常にぞんざいです。指で目などをつまんでいる子にはさすがに係員が注意していましたが、強く握り締める子からとりあげて係員に渡した
ヒヨコは、またすぐ群れに戻されていたようです。
あきれた企画なので、てっきり殺処分される採卵鶏のオスのヒヨコだからこのような扱いなるのかと思ったのですが、なんと違いました。このイベントのため
に孵化させたので、オスとメス、両方いるというのです。耳を疑いました。そして、終了したらもちろん殺処分です。ヒヨコは朝から交代もさせないので、「夕
方終わるころには、へろへろだよ」と研究所の人が自ら言うのも驚きました!
このヒヨコをもらうことはできないのか聞きましたが、「万が一、この研究所から鶏インフルエンザが出たりするといけないので、渡せない」とのこと。ならば、そのようなヒヨコを幼い子どもに触らせることは問題な
いのでしょうか?おかしな話です。
成鶏も、鶏舎には戻せない…つまり?
研究所の入り口にも、さまざまな種類の鶏がケージに入れられ、雌雄一羽ずつ展示されていました。一般の人に見せるときくらいバタリーケージはやめればいいのにと思いますが、おそらく悪いこととも思っていないのでしょう。
成鶏も、いったん外に出したものは、感染症の問題から鶏舎に戻せないのでは?と思い、聞いてみたところ、やはり「戻さない」とのこと。「殺処分か」の質
問には、「まだわからない」。もしや「食べる?」と思い、聞いてみたところ、それも「わからない」とのことでした。いったい、あの鶏たちはどうなったので
しょうか。
子豚も、ふれあいさせただけで殺処分!
研究所の玄関前ロータリーでは、朝から一日中、子豚を触らせるふれあいコーナーもやっていました。まさかと思い、帰り際に聞いてみたところ、何とこのコーナーの4匹の子豚も、イベント後に殺処分なのだそうです。食べるわけでもありません。
確かに、感染症の問題があるので、豚舎に戻せないのでしょう。だったら、出荷前の豚を見せて、そのまま出荷するのはどうかと思ったのですが、出荷前の豚は
大きくてぶつかってきたりするので触らせられないとのこと。一体どうしてそんなに触らせたいのでしょうか?肉になる直前の豚を実際に見るほうが、ずっと教
育的ではないかと思います(研究用なので、出荷になるのかどうかはわからないと、後で思いましたが)。
それにしても、ふれあいイベントのために生まれ、殺される、この仔豚たちの一生とは、一体何なのでしょうか。帰るときには、水入れも空でした。水入れで遊んでしまうからだそうです。非常にもの悲しい光景で
すが、あまりに感覚が違いすぎていて、何をどう訴えれば響くのか、見当もつきません。
体細胞クローン牛の試食会
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12歳のクローン牛、イチロー。彼を「つくった」
研究者は、今は違う研究をしているという・・・
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もうひとつ非常に驚いたのが、体細胞クローン牛の肉の試食会です。確かに規制はありませんが、農水省が出荷自粛としています。しかも、まだ生きている2頭のクローン牛を見学した直後の試食会……。でも、皆さん平気で食べていました。
ちなみに、レクチャーでは、クローンを「挿し木と同じ」と説明。絶句です。動物固有の苦痛などには全く考えも及んでいない証拠だと思いました。最近はほ
とんど体細胞クローン牛はつくられていませんが、生後半年までは異常や死亡が多いことはもっと知られるべきだと思います。
【動物衛生研究所】
この研究所も、数年前の一般公開では生きたマウスの展示をしていたそうですが、今回はしていませんでした。逆に、牛を使ったイベントの中止が掲示されて
いて、ホッと安心です。だれかが抗議してくれたかと思い、理由を聞いたところ、牛の調達が間に合わなかっただけだそうですが……。
それにしても、子どもでごったがえしていた畜草研とはうってかわって、動衛研は閑散とした雰囲気。生きた動物が「客寄せパンダ」である現実には非常に考
えさせられますが、研究内容の展示に徹する動衛研のほうが、研究所の一般公開の態度としては評価されるべきだと思います。
プリオン (※1) に大接近 !?
ただし、動衛研では、日本のBSE牛の脳切片を顕微鏡で見せていました。本物のプリオンがそこに……と思うと、なかなか衝撃的です。聞くと、プリオンはP3(※2)扱いだとか。これって、いいのでしょうか?
※1:たんばく質粒子からなる病原体
※2:有害な病原体などを扱う場合に、施設に講じなければいけない拡散防止措置のレベルが
4段階に分けられており、危険度の高いほうから2番目がP3。炭疽菌、ペスト菌などを扱える。
【理化学研究所】
理研も、行ってみると実験用マウスがいます。子どもの手に、幼いマウスを乗せて写真撮影するコーナーは驚きました。マウスに泣きだす子どもがいたり、人でごったがえしていて、めちゃくちゃな雰囲気です。
また、さまざまなマウスがケージに入れられて展示されており、ヌードマウスなどもいました。私の横にいた老夫婦は「かわいそうだな」「何だか哀れになっ
ちゃうねえ」と話しながら去っていったので、実物を見せることの効果は、あながち悪いものでもないのかもしれませんが……。
ちなみに、こちらのマウスはすべて実験に使うとのことで、もらうことはできませんでした。微生物管理が不要な実験もあるからとのこと。
また、マウスのぬり絵をさせるコーナーには「マウスの総合病院」と掲げてありました。ネズミを一生懸命病気にしているのに、病院とは……。マウスぬり
絵、マウスシール、マウス缶バッチ、さすが天下の理研、予算だけはたっぷりです。
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いたいけな子どものマウス
これもこのあと実験に使うとのこと
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化粧品研究などに使われる
ヘアレスマウス
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【最後に】
子どもたちは本当に動物が大好きですが、自分たちがふれあった動物が、それだけで殺されていると知ったら、一体どう思うでしょうか。また、これらの研究
所では、動物実験委員会等で、イベント利用についての審査・承認を行ったのでしょうか。動物取扱業者なら登録を行わなければならない行為が、研究所なら営
利性がないとして免除となってしまうのも解せません。中止の要望などはこれから行っていこうと思います。
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